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ヤクシマ クリエイターズ ネットワーク

屋久島に関連するクリエイターを紹介するサイトです。ネットワークと銘打ってますが、別にこれといって大きな野望を持っている訳ではなく、屋久島に関係するクリエイターたちにゆるーいヨコのつながりができていけば良いか程度に考えています。

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風雨の淀川 障子岳空撮 屋久島全貌空撮

志水哲也写真事務所    志水哲也

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PROFILE
志水哲也(写真家)1965年横浜生まれ。16歳の春、屋久島一人旅をきっかけに登山と写真を始める。登山家としても国内外に記録を持つ。「水」をテーマにした全国の渓谷取材をして多くの写真集を出版。2008年には写真集『水の屋久島』を平凡社から刊行し、屋久杉自然館でも写真展や講演会を行った。2009年以降も年に1度・半月程度は来島して、新たなテーマで屋久島の撮影を続ける予定。

ESSAY
淀川のほとりにて
 花崗岩の白い岩床・ナメラをゆるゆると透きとおった水が音もなく流れていく。ヤクスギ、ヤマグルマ、ヒメシャラなどの濃密な森のあちこちから、さまざまな小鳥のさえずりが聞こえ、時おりヤクジカのかん高い声が響く。日が当たる前の渓は青く静まり、日が当たれば流紋がマス目をつくってきらめく。霧が立ちこめれば森も渓もこの世のものとは思えない。目がくらむぐらい眩ゆく、瞬きする間になくなってしまいそうなぼんやりした風景が広がる。
 僕は屋久島の中で、どんな大雨が降っても濁ることのない淀川の風景がいちばん好きだ。清く透明な流れを見ていると、自分の心もこのようにありたいと思わされる。今まで空や森を映した渓谷の姿から足下のマクロの風景まで、いろいろな淀川を撮影してきた。清冽なその水に半身を浸し、水の中にカメラを入れて半水中写真を撮った時は、地上から見るのにも増して透明な水に魅了され、撮影に夢中になった。谷間にも強風が吹き、雨が降り込め、霧が流れるという大荒れの天気の日に撮った1枚は、霧を映した岩床が驚くほど明るく会心の作品だ。
 水がつくった円柱状の縦穴・ポットホールもそこかしこで見かけた。その穴の水の中で落葉がクルクル回る。長い歳月、小石がこのように回って、岩を削り、穴はできたのだろう。コロコロと可愛らしげな音を立て、岩床を伝って流れる水を見ていると、水がまるで遊んでいるように見えてくる。
 大雪が降った後の淀川はシャーベット状の雪が残り、流れも音もない風景だった。周囲の森は巨木が多く、傾斜もなくヤブも少ないので、道から外れて何時間もさまよい歩いたこともあった……。まだ見ていないが、星や月が水面に映えた淀川もさぞかし素敵だろう。
 この3年間、僕は淀川だけでなく、屋久島の渓谷を中心にあちこち撮影してきた。それまで地元の黒部渓谷をはじめ、日本全国の沢を渡り歩いて撮影してきたが、屋久島の沢の多彩な魅力には、驚かされ続けた3年間だった。「洋上アルプス」と呼ばれる屋久島は、1周105キロの島とは想像できないほどの峰々が連なり、たくさんの渓谷が切れ込み、無数の滝がかかる。この小さな島には日本全国の植物の8割が生息するというが、屋久島は80パーセントが山地で、豊かな森と水を有する日本列島のまさに縮図だった。
                    ※
 16歳の春休み、ただ遠くに行ってみたくて、通学路でいつも見ていたいちばん遠くへ行くブルートレインに乗って、南九州を一人旅した。
 旅の終わりに屋久島に渡り、2泊3日で初めての登山を企てた。霧煙る深い森に浮かびあがる。当時はまだ名も知らぬ多くの樹木や植物、緑の絨緞のようなさまざまなコケ類に水粒が滴り光る。そして、音もなくゆるゆると豊かに水を流す渓谷・淀川と出会った。鮮やかで、濃密で、不思議な風景と出会うことで、僕のなかの何かが呼び覚まされた。
 それから26年の歳月を経て、今、僕はカメラマンとして活動している。全国の渓谷の姿を自分なりにとらえ、表現することに意味を感じている。
 あの時、この島で生まれた感情はいったいどんな言葉で呼べばいいのだろうか。山や自然への憧れやときめきだけではなくて、その後の人生を変えた何か。確かに何かがあり、人生を決定づけられたような気がする。僕はそれが何だったのか探しているが、出会えただろうか。出会えるだろうか。(『屋久島ブック2009』掲載)
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